② ネガティブ思考がやめられないのは当たり前
前回の記事→: ① ネガティブ思考がやめられないのは当たり前
まずは人間脳の性質を理解する
人間は、放っておくと過去を振り返る傾向があります。過去の失敗や嫌な思い出を振り返ったとき、私たちは心身に不調をきたし、ひどい場合は精神疾患に陥ることもあるのです。これは他の生物と違った人間ならではの性質といっていいかもしれません。
過去の嫌な記憶を遡ったとき、それが現在のものではないことをはっきりと理解しているにもかかわらず、なぜ私たちは精神的にも肉体的にも疲弊してしまうのでしょうか。
答えは人間の脳のメカニズムにあります。
脳は、過去であろうが未来であろうがそれを判別することができません。これは映画を観てハラハラドキドキするのと同じで、脳は映画の世界と現実世界を区別することができないのです。
もし私たちが過去の嫌な体験を振り返れば、それはあたかも現実の出来事として信号を脳に与えます。同じように、未来に対しても悲観し、失敗することを想像すれば、それを現実の出来事として判別するので、結果として精神が疲弊することになります。脳は過去、現在、未来、そして空想と現実の判別がつきません。私たちが苦しんでいる根本原因は、ほんとんど実態なく目に見えないものなのです。
このように考えると、私たちはありもしない事に懊悩し、現実と妄想を同一視することで精神をすり減らしているに過ぎません。ポジティブな思考ルーチンを行う前提として、こういった人間脳の性質を理解しておく必要があるのです。
今の自分を点ではなく線でとらえよう
それでは、ここからが本題です。
ポジティブな思考ルーチンを行う上で最も大切なことは、まずは現在の自分を点ではなく線としてとらえるということです。
私たちが辛い、苦しいと感じることは、まさに現時点での感情に過ぎません。現時点の感情から一旦脱却し、客観的に今の自分の状態を見つめます。
「今、私は人間関係のことでとても落ち込んでいるなあ。」 こんな風に、あたかも他人のことのように、客観的に見つめるのです。
点(現時点)に固執している自身の感情をとりあえずは解放していく作業ですので、ここでは決して否定的にならず淡々と進めていきましょう。
そして次に、目標達成した時の自分を思い浮かべます。こうなることが自分に幸せをもたらしてくれるといった理想像は誰しも心に宿っていると思います。理想の自分になるには、どういう目標を達成すればよいでしょうか。「どうせできるわけがない。」などという否定的な感情は持たず、とにかく目標達成した時の喜びと感動に浸ってください。
その時、あなたは誰と一緒にいるでしょうか?
一緒にいる人の顔はどんな感じでしょうか?
周囲の景色はどのように映っていますか?
これらの光景をじっくり時間をかけて味わってください。
それが終われば次は、目標達成した後の生活を想像するのです。これは人によっては5年後かもしれませんし30年後かもしれません。目標が完全に達成されたのですから、当然あなたの日常は希望に満ち溢れ、幸せな日々を送っていることでしょう。幸せな状態とはまさにこのことです。
幸せに満ち溢れ、本当の豊かさを実感する日常。 ゆっくり時間をかけて味わってください。
あなたの周りには誰がいるでしょうか?
その人達はどんな表情をしているでしょうか?
あなたの周りの光景はどんな感じでしょうか?
この時、あなたの周りにいる人が、あなたにとっての幸せの象徴的な存在です。経済的な成功を強く望んでいる人でも、想像の中で家族の顔が出てきた人は、家族との大切な時間が実はその人にとっての真の幸せなのかもしれません。
そして、目標達成後の日常生活を十分に思い巡らせた後、次のように思考するのです。
「目標達成したことは、通過点に過ぎない。」
目標達成した後は、どんどん世界が拡がっていき、次々と幸せが舞い込んできます。完全に満たされた世界に住むあなたにとって、もはやあの時の目標達成は単なる通過点に過ぎなかったのです。
未来の自分から、現在の自分を俯瞰しましょう
さて、目標達成した時のこと、目標達成した後の生活に意識を集中し、目いっぱいの幸せを感じ取ったら、次は未来に意識を置いたままの状態で、現在の私を俯瞰(客観視)します。
大切なのは、あくまでも未来の自分に意識を集中することです。人間の脳は、現実も未来も過去も判別できないため、未来の幸せに意識を集中させなければなりません。
未来の自分から、現在の自分を見つめたとき、次のように思いましょう。
「現在の自分は、長い人生の中のほんの一時点に過ぎないんだ。」
これこそが、現在を「点ではなく線でとらえる」ということなのです。
人はそれぞれ長い人生の中でいろいろな紆余曲折を経験して生きています。その過程の一つの点として、現在の自分を認識するのです。
そして、未来のあなたはこのように感じるはずです。
「あの時の辛い経験があったからこそ、今の幸せな自分がいるんだなぁ。」
「今思えば、どうでもいいことで悩んでいたなぁ。」
「あの頃は本当に視野が狭かったなぁ。」
「失敗というのは本当は無いんだなぁ。今こうして幸せでいられてるのだから。」
以上のようなことが、ポジティブ思考を持った人間の思考ルーチンです。
一概に「強く思うことが運を引き寄せ、成功へと導く」といった自己啓発本を読んでも、なかなか思うようにポジティブ思考ができないのは、その前提である人間の特性と思考ルーチンを紐解かないからなのです。
人間の脳は複雑なようで実は単純です。マイナスの感情は現実のものとして脳に伝わり、様々な形で心身に異常をきたすわけですが、そのマイナス感情のほとんどは過去を思い煩うことが原因です。ポジティブな思考ルーチンはこれとは真逆で、未来のことをプラス感情で考えることを指します。
〈ネガティブ思考〉
現在に意識を固執させ、過去を思い煩う
〈ポジティブ思考〉
未来に思考を置き、現在を俯瞰する
現在に意識を固執させ、過去を思い煩う
〈ポジティブ思考〉
未来に思考を置き、現在を俯瞰する
通常、未来を思い描くことは創造力を必要とする疲れる作業と思われがちです。しかし、実際は疲れることでも何でもありません。幸せな未来を楽観的に想像し、未来に思考を置く癖を付けるだけのことで、私たちは幸せに成功することができるのです。
以上の思考ルーチンを一日5回程度繰り返せば、あなたも立派な「ポジティブ思考人間」です。
(了)
- 作者: 池谷裕二
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