「不動心」育成ブログ

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⑥ 反論する方法【オフェンス編 2 】

キャパシティの中で妥結点を見出す

議論で平行線が続けば、お互い納得した上で折り合いをつけることは難しい。にもかかわらず、議論というのは往々にして平行線をたどることになる。中には、とにかく何でもかんでも批判する人もいるが、これでは物事が一向に解決しない。議論を終息に向かわせるには、こちらから歩み寄る姿勢が必要なのは前回記事で述べた通りだ。

 

では、どのようにして相手に歩み寄ればいいだろうか。

 

それを解決する上でカギとなる考え方がある。
-「必要性は受け入れて、キャパシティ(許容範囲)を議論する。」

 

たとえば、あるイベントの集客を目的としたパンフレット作成について議論になったとする。パンフレットを作る必要性には自分も賛同しているとして、それ以外のところで議論の余地はないだろうか。
この場合、「時間が少な過ぎる」、「予算が足りない」、「人員が不足している」といった業務上キャパシティをオーバーしていることについて異論を唱えるのである。実際に事業でネックとなるのは、時間とお金と人材に関する事がほとんどだ。まずは議論の対象がキャパシティの範囲内であるかどうかについて、自分なりの考えを持っておこう。

 

要するに「時間」「予算」「人員」の3つの側面から、お互いの妥結点を見出せるように働きかけるのだ。

 

「来週までに完成するには時間がありません。少なくとも20日間は必要だと考えています。」
「仰る部数を作成するにも予算が足りません。ページ数を減らすなどコスト削減の動きが必要です。」
「期日までに完成させるには人手が足りません。他部署から応援を呼ぶなど、人員確保が優先だと思います。」

 

こういった発言は、キャパシティの中で「妥結点」をどこに置くかの議論であって、こちらからは明確に「反対」の意思表示をしているのではない。パンフレットを作る目的には賛同しているが、完成するまでの過程には反論している状態なのである。

 

議論は平行線をたどるだけでは改善しない。今のキャパシティを考えた上で、お互いに納得できる妥結点を探ることは、極めて相手に歩み寄りやすい反論方法なのである。
 

代案の上手な話し方

何度も繰り返しになるが、議論が平行線をたどる原因は、お互いの主張を一歩も譲らなかったり、反対ばかりして具体的な解決策が何ら見えてこないからだ。
「反対ばかりしてるけど、あなたはどう思っているんだ?」と問われた時に、しっかりと自分の意見を言えるように、なるべく普段から代案を用意しておこう。代案があれば精神的に余裕も生まれ、反論もやりやすくなるのだ。

 そして、代案はできるだけ意表を突いたものが望ましい。意表を突くとは、想定外、専門外の内容を取り上げることである。


たとえば、新卒採用に力を入れたいという会社の方針があり、そのために合同企業説明会に出展するという前提で議論があったとする。しかし、優秀な学生を安定的に採用したいというが目的であれば、他にもいろいろな方法があるのはず。大学構内でプレゼンしたり、自社ホームページに特設ページを開設したり、SNSをうまく活用することもできるだろう。
社会では、一つの方法だけを前提に議論されることは結構多いので、前もってそれが察知できれば多方面に反論の余地が広がるのだ。

 

しかしここで気をつけたいのが、上っ面だけ理解した代案は控えたほうがいい。代案を話すには、それが良い案だとわかるだけの裏付けが必要なのだ。

裏付けでも特に有効なのが成功事例。過去に実際うまくいった前例を述べることで、主張の信憑性は格段に高まるのである。
また、統計データや資料もあったほうがいい。資料に関しては、企業が独自で作成したものよりも、なるべくなら省庁など公的機関から出ている資料のほうがいいだろう。きれいにまとめらた体裁の良い資料よりも、見た目はいまいちの公的資料のほうが信憑性は高く見られるからだ。

 

また、代案を主張する時にはなるべく歴史背景や経緯を話していこう。歴史背景とは動くことのない事実なので、相手に反論の隙を与えない。
たとえば、自分は新卒採用にSNSを用いるべきだという意見であれば、まずはSNSがどういった背景で普及してきたのかという歴史的事実を時系列で話す。聞き手もこれについては事実なので反論しようにもできず、知らず知らずのうちに話に信憑性が生まれてくるのだ。

 

このように、議論では代案を用意しておくのがベストであり、それにひと工夫を凝らせば、非常に効果的な反論方法となるのである。
 

議論と関係ないところを褒める

相手の主張には反対するけれども、議論の内容とは違う部分を褒めたり、感謝の気持ちを伝える。これも非常に有効な手段だ。

 

たとえば、相手の熱意を褒める。

 

「よくこれだけのことを調べましたね。すごいですね。」
「○○さんの仕事に向き合う姿勢はすごいですね。私も見習わないといけません。」

 

マズローの五大欲求の中には承認の欲求というものがある。これは、自分が集団から価値ある存在と認められ、尊重されることを求める欲求だ。褒められて悪い気をする人はいない。尊重し、認めてあげることは、集団の中でその人の重要性を高めることに繋がるのだ。

 

しかし、ここで配慮しなければならないのは、なんでもかんでも認めないこと。あくまでも、仕事に対する姿勢や熱意を認めるのであって、相手の意見までは認めていない。従って、議論の真っただ中よりも終盤に差し掛かったあたりでこの手法を入れていくほうが効果的である。
 

勝ちすぎてはいけない

前回記事で引用したデール・カーネギーの言葉にもあるように、理論攻めで相手をやっつけて心地よい気分に浸れるのはほんの一瞬だけだ。相手は心の中で絶対に納得していないし、その時に味わった屈辱を忘れてはいない。
私たちはいずれ別の形で仕返しを受けることになるのである。

 

たとえ相手が感情的に迫ってきたとしても、それに付き合わず冷静に議論し、相手に歩み寄る姿勢を忘れずにいよう。相手を論戦で根絶やしにできることがわかっても、あえてそれをやらない。逆に感謝と讃嘆で相手を受け入れるのだ。

 

「貴重なご意見、大変参考になりました。ありがとうございます。」
「すごく仕事に対して真剣に向き合っておられますね。私も良い勉強になりました。」

 

このような言葉が出てくるようになれば、私たちの反論は半ば成功し、ようやく論戦は終息へと向かっていくのだ。

 

「どんな正論をもってしても、相手を議論で屈服させることは絶対にできない。」

 

<了>

 

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